僕の長い教員生活のなかで、「倫理」の授業が僕の中心にありました。 当時、高2で「世界史」や「日本史」と並んで「倫理」の選択がありました。内容は、世界史、日本史、倫理ともに古代を扱いました。僕はこの時間が好きで、毎回授業の後にその日の授業を「実況中継」にまとめて自分のホームページにアップしました。
定年後、それを出版社に持ち込んでみました。しかし、A4で300枚ちかくになる大部な作品の出版は、僕のような無名な人間には無理と言われました。少なくとも量的に半分以下にする必要があるということでした。その要求はぼくにとっては厳しいものでした。 内容を半分以下にすることは、ある意味では、まったく新しく書き直すことを意味していました。小品ならいざ知らず、これをすべて書き直すのは体力的にもむつかしいと思いました。しかし、それ以上に躊躇した理由がありました。
学校の授業にはいろいろな意味と形があります。僕は、倫理の授業の前にはいつも次のようなことを考えながら教壇へ向かいました。「この時間、僕は生徒の前に立つ。そして、テーマにそって考え語る。僕はこのように考えました。そして、僕は、こう生きています。皆さんはどうですか。」 それが、何か「人間の発見」「生きる喜び」につながればとの祈りを込めながら、僕は語ってきました。確かに、この作品は無駄な部分もあります。雑談も多くあります。しかし、僕にとっては、生徒たちと「その時を過ごす」という意味では、必要なものだと考えました。
そんなわけで、そのままの形での出版をあきらめました。しかし、この作品に対しては愛着があります。何かの形で皆さんに読んでもらえたらと思い、HPにアップしてみました。